今治を卒業する人へ 2026
- kandaiki
- 4 日前
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更新日:2 日前
28歳ぐらいで、まだ東京で暮らしていたころのことだ。
ある日の昼下がり、駅のホームに立っていたら、向かいのホームに見覚えのある顔を見つけた。
中学と高校が同じで、高3の時に同じクラスになった足立だった。
高校を卒業して、お互い東京に出ていたが、もう10年近く会っていなかった。
それでも、一目見てあれは、野球部の足立だと分かった。
私は思わず、向かいのホームに向かって叫んだ。
「足立!」
すると足立も私に気づき、
「おお!」というような顔をしてこちらを見た。
疲れたサラリーマンの顔をしていたが、その瞬間、表情が明るくなった。
当然、ホームの間には線路があり、近くに行くことも、会話をすることもできない。
お互い少し笑いながら、ただ立っていて、何か言おうとしても、言葉にならないまま数秒間が過ぎた。
そうしているうちに、足立のホームに電車が入ってきた。
足立はその電車に乗り込み、すぐにこちらのホームが見える窓際まで来て、手を振ってくれた。
私は少し照れくさくて、声は出さずに口だけ動かした。
「ガンバレヨ」
すると足立も、大きくうなずいて、
「オマエモナ」
そう口が動いていた。
私も足立も、笑いながら泣いていた。
どうして泣いていたのか、今でもうまく説明できない感情だった。
私たちの代は、就職氷河期世代のまっただ中。
あの頃は、誰もが思い描いていたような人生を、歩んではいなかっただろう。
お互い、それぞれに色々あったと思う。
それでも、向かいのホームに立つ足立を見た瞬間、
高校生だったあの頃の、あのエネルギーのようなものに、一瞬だけ戻れていた。
やがて電車は動き出し、足立の姿は電車と一緒に消えていった。
それ以来、足立には会っていない。





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