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今治を卒業する人へ 2026

更新日:3月17日


28歳ぐらいで、まだ東京で暮らしていたころのことだ。


ある日の昼下がり、駅のホームに立っていたら、向かいのホームに見覚えのある顔を見つけた。

中学と高校が同じで、高3の時に同じクラスになった足立だった。

高校を卒業して、お互い東京に出ていたが、もう10年近く会っていなかった。


それでも、一目見てあれは、野球部の足立だと分かった。


私は思わず、向かいのホームに向かって叫んだ。


「足立!」


すると足立も私に気づき、

「おお!」というような顔をしてこちらを見た。

疲れたサラリーマンの顔をしていたが、その瞬間、表情が明るくなった。


当然、ホームの間には線路があり、近くに行くことも、会話をすることもできない。

お互い少し笑いながら、ただ立っていて、何か言おうとしても、言葉にならないまま数秒間が過ぎた。


そうしているうちに、足立のホームに電車が入ってきた。

足立はその電車に乗り込み、すぐにこちらのホームが見える窓際まで来て、手を振ってくれた。


私は少し照れくさくて、声は出さずに口だけ動かした。

「ガンバレヨ」


すると足立も、大きくうなずいて、

「オマエモナ」


そう口が動いていた。


私も足立も、笑いながら泣いていた。

どうして泣いていたのか、今でもうまく説明できない感情だった。


私たちの代は、就職氷河期世代のまっただ中。

あの頃は、誰もが思い描いていたような人生を、歩んではいなかっただろう。

お互い、それぞれに色々あったと思う。


それでも、向かいのホームに立つ足立を見た瞬間、

高校生だったあの頃の、あのエネルギーのようなものに、一瞬だけ戻れていた。


やがて電車は動き出し、足立の姿は電車と一緒に消えていった。

それ以来、足立には会っていない。


 
 
 

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