山に囲まれた小さな街に18歳まで住んでいた。市街地の端から端まで、自転車で30分くらいで行けてしまうような、小さな街だった。
夏に空は青く光り、雪が降る冬は墨絵の世界になる。春には山が萌黄色に染まり、それが秋なると燃えるように紅葉した。四季のどれもが色こく、美しい場所だった。
ただ、多くの若者がそうであるように、十代の頃の自分も、自然の美しさよりも都会の刺激を求めた。「高校を卒業したら、こんな田舎から絶対に出て、東京に行く」そればかり考えていた。
念願かなって、卒業と同時に東京の大学に進学した。
転がるような東京の生活は、楽しかった。
でも、ある日「もういいな」と感じていた。
上京から20年が過ぎていた。
その後、半年かけて日本中を旅した。
コンビニ、スーパー、ホームセンター、ドラッグストア。
どこに行っても、街並みは同じだったけど、この国の自然は、本当に美しかった。
ビルに囲まれた都会で20年間暮らしたからこそ、より自然の有り難みに気づいたとも言える。
僕は、今治に来て8年になる。

みんなは、この街の卒業していく。
戻ってこいとは言わない。いろんな場所に住み、自分が幸せだと感じるところで暮らせばいい。
年齢によって、住みたい場所って結構変わるものですよ。
卒業、おめでとう。
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